グランプラス‐1990年ヨーロッパひとり旅 7 Grand Place :Solo-travel to Europe in 1990

1990年2ー3月ヨーロッパひとり旅

※初めてご訪問くださった方へ
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ベルギー ブリュッセル観光

グランプラス La Grand-Place

荷物をホテルに置いてすっきりしたところで、彼女が言った。

「ねえ、お腹空いてへん?」

「そうだね」

ということで、アンティークな内装のお店に入った。

私はそれほどひどく空いていたわけではなかったので、フルーツカクテルとオレンジジュースを注文する。

店内には私たちの他にはほとんど客がいなかった。

食べながら、私たちはお互いのこれまでの旅やこれからのことなど話した。

彼女はもう結構長いこと旅行していて、お金がだんだんなくなってきたので、ここのところはずっとホテル代を浮かすために夜行列車に乗って、だいたいひと晩で移動できる街を点々と結びながら移動しているのだという。

今夜もミュンヘンへ発つつもりだけど、それも時刻表と相談して決めた目的地なのだそうだ。

この時の私にはまだ夜行列車なんて怖いものというイメージがあったので、なんとなく尊敬のまなざしで見つめてしまった。

とにかくその夜行に乗るまでは予定はないという。

そこで、店を出たらグランプラスへ行き、それから小便小僧も見ておこうということになった。

 

さて、これまでグランプラスという名前が頻繁に出てきたが、これは(ご存じのとおり)ブリュッセルの中心にある広場のことである。

「110m×69mという広さのこの広場は、バロック様式のギルドハウス、ゴシック様式の市庁舎を除く部分は、1695年にフランス国王ルイ14世の命令で砲撃され破壊されたが、4年を経ずしてブリュッセル市民やギルド職人組合の手で再建された」とパンフレットにある1

この広場では毎日、花市が開かれ2、日曜日には小鳥市も見られるという。

私が行った日は金曜日だったので、花市だけだったが、この花市を見るというのもここを訪れる目的のひとつだった。

広場に着くと期待どおり、たくさんの苗木、切り花、鉢植えが広げられていた。明日にはオランダへ行くつもりだったので買うことはできないが、私はゆっくりそれらの花を眺めて歩いた。

広場にはたくさんの人がいた。

石段には男の子たちが座って、歩き過ぎる人々を何やら評しながら笑っている様子。

カフェのテーブルには、観光客だろうか、中年の男女が楽しそうに語り合っている。

日中の暖かい時間で、誰もが気持ち良さそうにこのひとときを楽しんでいるように見えた。中には、ビールを飲み陽気な笑い声をあげている人たちもいる。

中世の建物に区切られた空間は、時間さえも現代とは別に流れているようだった。

小便小僧 Manneken Pis

それから、私たちは小便小僧 Manneken Pis3を見に行った4

土産物屋やチョコレート屋5が並ぶ石畳の上を歩く。

途中でレース編みのお店に入り、しばらく時間をかけてベルギー伝統工芸のレース細工6を見た。

手作りらしく少々高いものばかりだったが、彼女はレースの花瓶敷、私はポプリの入った匂い袋と小さな額に入ったレースを買った。お店のお姉さんは、私の買った額を丁寧に包装してくれ、

「こちら側がガラスだから気を付けて」

と注意してくれた。

カメラの性能も、撮る人間のテクニックも、まったくお粗末ですが、なんとなく小ささはわかっていただけるでしょうか。

小便小僧は思ったよりも小さく、それでもちゃんと柵に囲まれて、曲がり角に立っていた。

年間を通していろいろな衣装を着せられるというが、その日は白い羽のついた黒い帽子に、黒いボタンの白いコート、白い手袋といった出で立ちだった。立派なコスチュームに身を固めながらも、ちょろちょろと放出している。可愛らしくてユーモラスな姿だった。

小さな有名人、小便小僧ジュリアンくんを見たあと、私たちはブリュッセルの街を少し歩いた。

私は、この街の雰囲気がとても気に入った。人々に、なんとなく気取らない親しみが感じられるように思った。

日本語で話しかけられた

ベルギーの人々は概して勤勉らしい7。日本語を勉強している人もわりといるらしく、彼女と駅にいる時にも、学生らしいひとりの男の人が日本語で話し掛けてきた。

人の好さそうな顔を真っ赤にして、考えながらゆっくりと話す。

一生懸命話しているように見えるのに、私の隣にいる彼女は横を向いてほとんど答えない。警戒しているのだ。

旅行中は、自分の身は自分で守らなければならない。話し掛けてくる人に簡単に気を許してはいけない。

それは、鉄則とも言えるけれど、なんだかかなしい。

もしかしたら本当に日本語を勉強していて、純粋にその成果を試したかっただけかもしれない。

たぶんそうだろう。

でもやはり世の中には悪いことを考える人もいる。だから、自分を守るために誰かを傷つけることになってしまうこともある8

カタコトフランス語

その後、ふたりとも郵便局へ行きたかったので探しながら歩く。

ベルギーはわりあい英語が通じないらしい。

彼女は何ヶ月か英語圏へ留学をした経験があるそうで、英語は日常会話はなんとか大丈夫らしいがあまり自分から話し掛けない。やはり、警戒心を解ききっていないようだった。

私はそれほど英語で話せるわけでもなく、かといってフランス語もできなかったが『旅の会話集』で覚えた言い回しで、道がわからない時は手当たり次第、人に訊くようにしていた。

それが現地の人と話すいいチャンスになるし、なにより地図を見てうろうろするより早いと信じているのである。

「Où est le bureau de poste?(郵便局はどこですか?)」

それらしく言おうとすればちゃんと通じるから面白い。

「フランス語話せるの?」

「ううん、だめ」

でもちゃんと相手は指さして教えてくれるので、そっちの方にしばらく歩き、また他の人に同じ質問をする。

無事に切手を買い、はがきを出して目的を果たした私たちは、中央駅に戻ることにした。

8 ブルージュ へ続く)

 

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