ローマ市内1990年ヨーロッパひとり旅 23 Roma: Solo-travel to Europe in 1990

1990年2ー3月ヨーロッパひとり旅

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(1990年32日間の旅の19日目、前日一緒に行動していた4人ともお別れ)

またひとりに戻って ローマ市内観光 イタリア

翌3月11日、それぞれ私たちは、また自分のルートをたどることにした。

みちるとダンボはスペイン・ポルトガル方面へ、リーはイタリアを南下、ワトソンはローマに滞在する。私は今夜の夜行でスイスへ行くつもりだ。

朝早く、まず、リーが出発した。

続いてワトソンくん。シングルで泊まれるホテルに移るという。

「ちゃんと探せるかなぁ」

情けない顔で心配しているので私は言った。

「何言ってんの。私だってずーっと探してこれたのよ。大丈夫。インフォメーションに行って探してもらえばいいよ」

まったく頼りない様子だ。

そういえば、彼は、来る飛行機の中で隣になったリーにくっついて、ここまで来たと言っていた。やれやれ。

まあ、彼もあと1週間もすれば、たくましくなるでしょう1

最後にダンボとみちるが私の部屋を覗いて声を掛けてくれた。

「じゃあ、俺たちも行くよ。気をつけてな」

さて、私はどうしよう。

夜行は20:45発。とにかく外に出よう。

チェックアウト後、両替に時間がかかり、昼過ぎになってようやく市内を歩き出す。

スペイン広場Piazza di Spagna。映画『ローマの休日』でも登場した有名な広場ですが、意外に狭いという印象でした。階段に座って、のんびり過ごす人たちがたくさんいました。2019年8月追記:ここに座ることを禁じる条例が施行され、こんな風景はもう見られないことになりました。

なんと、最初の飛行機で一緒だったHくんと、ここでばったり再会しました。

トレヴィの泉Fontana di Treviは工事中でした。この旅行中、ウィーンでもフィレンツェでもヴァチカンでも工事中の場所がとてもたくさんありました。ぜひもう一度行かなくては!

真実の口Bocca della Veritàみんながこの口に手を入れて写真を撮るので、口が少し大きくなったという噂を聞きました。

真実の口のそばにあったトリトンの噴水

アウグストゥス廟Mausoleum Augusti。紀元前28年に建造されたという霊廟で、長期間放置されたために、略奪、破壊され廃墟の様相を呈しています。観光客も、コロッセオやスペイン広場と比べずっと少なかったように記憶しています。

最高裁判所Palazzo di Giustizia。こちらもエマヌエーレ2世記念館と同様、ローマ市民からは不評なのだとか。「醜い建物Palazzaccio」とも呼ばれているそう。えー?醜いかなぁ。単純に「すごい!」と思うけど(笑)。

ナヴォーナ広場Piazza Navona。オベリスクは「四大河の噴水Fontana dei Quattro Fiumi」。世界に現存している30本(27本?)のオベリスクのうち13本がローマにあるそうです(Wikipediaより)。この広場にはネプチューンネプチューンの噴水もあります。

フォロロマーノを挟んでコロッセオの反対側にあるカンピドーリョ広場Piazza del Campidoglioとローマ市庁舎(セナトリオ宮Palazzo Senatorio)。よく見ると、写っている人々のファッションも30年前らしい年代を感じさせます。

ナヴォーナ広場などをぶらぶら歩き、ヴィット―リオ・エマヌエーレ2世記念館の横の公園でひと休みする。

ベンチに座ってぼーっとしていると、小柄なおじいさんがやって来て、隣に座っていいかという手振りをした。

しばらく並んで座っていると、

「日本人か?」

と訊かれた。

「そうです」

おじいさんは英語は全然わからないという。

私が持っていた「旅の6ヶ国語会話辞典」を見せると、イタリア語のページを開いて嬉しそうに膝を叩きながら、口に出して読んでくれる。

「あなたは学生ですか」という一文を指し、私に見せる。

うなずき返すと、今度は「旅行者ですか」という文を指差す。

そんなふうに私の片言のイタリア語と英語、そして身振り手振りで奇妙な会話が始まった。

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おじいさんはローマ人だという。ローマではいろいろなところを見たかと訊くので「コロッセオ、スペイン広場、トレヴィの泉、真実の口・・・」と行ったところを答えていった。

するとおじいさんは、両手を挙げて肩をすくめながら言う。

「ああ、真実の口!どうして日本人はみんな真実の口を見に行くんだろう。そして必ずみんなあの口に手を入れて写真を撮る。理解できない」

「『ローマの休日』という映画があったからよ」

「あんなところより、もっと見るところがあるのに」

そう言って、私の知らない場所の名前をいくつか挙げて、行ったかと訊く。

「行ってないわ」

「信じられない!ローマは素晴らしいところだ。本当のローマを見てほしい」

「私はもう今夜スイスに行くの」

「なんてことだ!本当のローマを見るにはもっと時間をかけなければ!」

「残念だけど、もう列車は決まっているの」

「うむ、じゃあ、少しの間だけ、案内しよう」

そう言っておじいさんは、フォロロマーノを見晴らせる場所まで連れて行ってくれた。

周りには様々な国から来た観光客が、同じようにフォロロマーノの方を眺め、双眼鏡を覗いたり写真を撮ったりしている。

おじいさんが連れて行ってくれたのはモンテ・タルペオ通り辺りと思われます。前日見たのとは反対側からフォロロマーノを一望することができました。

「きっとあれはアメリカ人だな。あっちにいるのはどこから来たんだろう。フランス人かもしれない。そして君は日本人だ。ここにはたくさんの人がいるけれど、ローマ人は私だけだ」

おじいさんは誇らしげだった。

しばらくその辺りを歩き、目に留まったものを説明してくれるが、イタリア語なのでよくわからない。それでもおじいさんは満足そうだった。

「このベンチで少し休もう」

再び、並んで座る。遠くを指さしておじいさんが言った。

「私の家はあっちの方なんだよ。どうだい、夕食を一緒に食べないかい?」

正直なところ、私はまだこのおじいさんに警戒心を持っていた。年を取っているからといって油断はできない。ひとりきりの旅でずっと緊張していた私は、素直に応じることができなかった。

「ね?一緒に食事をしよう」

「でも、列車の時間が決まっているし」

「そうか。残念だな。じゃあ、駅まで送ろう」

「いえ、大丈夫です」

「切符を見せてごらん。・・・なんだ、まだ4時間もあるじゃないか。大丈夫だよ、食事をするには十分だ」

「でも・・・」

私はつい、嘘をついてしまった。

「友達が駅で待っているの」

「友達?男の友達(amico)?それとも女の友達(amica)?」

「ええっと、男の子がひとりと女の子がひとり」

「みんな日本人?」

「そう」

「今も待っているのかい?」

「いえ、5時に待ち合わせしているの」

「そうか。じゃあ、仕方がない」

おじいさんはひどく残念そうだった。

(私は何を疑っているんだろう。本当に良い人なのかもしれないじゃない)

おじいさんの残念そうな顔を見て、心が痛んだ。

「自分の身は自分で守る」がひとり旅の鉄則だ。でも、おじいさんは本当にただ食事を一緒にしたいだけかもしれない。

迷ったが、私は誘いを断った。

「じゃあ、駅まで送るよ。近道を知っているから」

案内してくれた小さな道を歩いて行くと、おじいさんの言ったとおり、思っていたよりずっと早くテルミニ駅に着いた。

「さあ、あれが駅だよ。私はこっちの方向に行くから、ここでお別れだ」

そういっておじいさんは手を差し出した。

握手をし、なんだかとても申し訳ない気持ちになった。頬にキスをしてくれて、おじいさんは去って行った。優しくしてくれる人を警戒しなければいけないなんて、かなしい。おじいさんはきっとただ一緒にご飯を食べる相手がほしかっただけなんだろうに。

その後、予定どおり夜行列車に乗って、スイスの首都ベルンへ向かった。

24 スイスの首都ベルン へ続く)

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